記者団から「都政とは関係なくて恐縮ですが…」と質問を受けると、待ってましたとばかりに熱弁を振るった。
「これは言いたいことがいっぱいあるんだ。都知事は恒例で横綱審議会の委員になるんだけど、私は辞退しました。大相撲にうんざりしてるから。『八百長はない』とはなかなか言い切れないんじゃない?現役の横綱が(法廷に)出てって『あります』とは言わないだろう、そりゃ」
たいていの場合、「都政と関係のある質問してくれよ」とうっちゃる知事ががっぷり四つに組んだ背景には、45年前の怨念がある。人気作家だった1963年9月場所の千秋楽、全勝同士の横綱対決となった柏戸-大鵬の一番を観戦し、スポーツ新聞に「尊い国歌をあんなつまらぬ八百長ショーのあとにぬけぬけと歌わないでくれ」などと書いた。しかも協会ぐるみの八百長と断じたため、名誉棄損で東京地検に告訴される騒ぎになった。
のちに告訴は取り下げられたが、いまも苦々しい思い出のようだ。
自ら当時を振り返って「例の柏戸-大鵬の取組についてコメントして問題になったんだけど、その取組じゃなくても、砂かぶりに座っていると、『おい押せよ!早く押せ!なにしてんだ押せよ!』ってみんなゲラゲラ笑って見てんだよ。そんなおおらかな時代があったな。あれは八百長でしょうな(笑)」と証言した。
さらに「それがなんとなくまかり通ってて、ごっつぁんで済んだ時代だけど、カネが絡んでくると変なことになっちゃったね。私が問題を起こした事件なんかでも、『あれは片八百長かな最低(でも)』って言ったら、あとでいろんな人が証言し出して、あれも歴然とした金の動いた八百長だったという記事を読みましたがね。その信ぴょう性については分かりません」と慎重な言い回しで付け加えた。
八百長疑惑裁判は、週刊現代が昨年1月から「横綱・朝青龍の八百長を告発する!」などの見出しで打ったキャンペーン記事に対し、協会と朝青龍ら力士が発行元の講談社とライターの武田頼政氏らを相手取り、損害賠償と謝罪広告を求めて東京地裁に提訴。この日は異例の横綱出廷で注目を集めた。記事は白星売買に切り込んでいるが、朝青龍は法廷で「いつでも真剣勝負」と疑惑を完全否定した。
知事は「八百長でいかなる権威が保たれても権威じゃない。カネで支えられてるんだったら」と45年前と考えに変わりがないことを明らかにした。石原知事VS朝青龍の“場外乱闘”もあり得るか?