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風鈴が涼しげに響く、川崎大師・風鈴市

 「安禅必ずしも山水を用いず、心頭滅却すれば火もまた涼し」とは、織田信長に焼き討ちされた恵林寺で快川禅師が詠んだ句。火もまた涼しの境地へたどり着くことは凡人には難しいかもしれないが、涼しさというものは、精神的な感覚でもあるらしい。

 17日、神奈川県川崎市の川崎大師平間寺(へいけんじ)で、風鈴市が始まった。16回目を迎えた夏の恒例行事には、47都道府県から900種類、3万個の風鈴が集められ、涼しげな音色を響かせた。会期中30万人の人出が見込まれ、21日まで。

 川崎大師平間寺の由来は平安時代にさかのぼる。川崎に住み着いた武士の平間兼豊、兼乗親子の夢まくらに一人の高僧が立ち、翌朝、告げられたとおり網を投じると弘法大師の木像が引き上げられた。草庵を結んで供養していたが、高野山の尊賢上人と力を合わせ、本尊を厄除弘法大師と称し、川崎大師平間寺を建立したという。徳川将軍家の帰依も篤く、勅願寺に列せられた由縁により大本堂大棟には菊花の紋章が許されている。

 風鈴市開催中の境内では、川崎大師オリジナルの厄除だるま風鈴をはじめ、石川県の九谷焼風鈴、鳥取県の上神焼(かずわやき)風鈴、青森県の津軽びいどろ風鈴など、夏を彩る各地の風鈴がつるされ、なかには、キャラクター風鈴や18金製の風鈴もあり、訪れた人々の目と耳を楽しませた。

 また、川崎大師平間寺のそばにある明長寺には、11代将軍徳川家斉が川崎大師平間寺へ参詣するさい、平間寺の降円上人が急逝したため遺骸を預かったという逸話が伝えられている。明長寺には、荻田主馬という武将が大坂夏の陣のさいに手柄を立て家康から拝領したといわれる小袖も残されている。

 神社仏閣には樹木が多く、土の地面の木陰は夏の日中でも涼しさを感じることがある。暑い夏を乗り切る工夫がさまざまにいわれているが、エアコンなどなかった時代から伝わる風鈴も、涼しさを作り出す。(竹内みちまろ)

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