NANAは「みんなの妖精」と呼ばれる大人気アイドルであるが、本性は性悪で傲慢という裏表のあるキャラである。自分になびかない桂木廉(玉森裕太、Kis-My-Ft2)に反発しながらも興味を抱き、本気で惹かれていく。恋敵の桜庭美男(瀧本美織)を執拗に敵視し、A.N.JELLをひっかき回す存在である。
韓国版のヘイは憎たらしいほどのふてぶてしさを有していた。ヘイを演じたユイは『美男ですね』によって日本でも知名度が上がったが、強烈なヘイの印象が本人のイメージに投影されてしまうほどであった。そのヘイに相当する役が小嶋陽菜にキャスティングされたことは韓国版のファンには意外感がある。
小嶋は2008年放送のドラマ『ヤスコとケンジ』で意地悪な女子高生を演じた経験があるが、それでも、ノースリーブスの「マイペース担当」で、おっとりした小嶋がヘイの持つキツさを演じることはイメージしにくい。実際、小嶋はNANAとして裏表のある小悪魔ぶりを見事に演じているが、裏の性格の悪さも一種の強がりに見えてしまう。
日本版ではNANAの専属ヘアメイクのトオル(楽しんご)がオリジナル・キャラで登場する。トオルはNANAの本性を知っている人物で、NANAからワガママをぶつけられる存在である。NANAとトオルの関係によってNANAの本性が分かりやすく演出されるが、相手がナヨナヨした楽しんごであるため、女王様キャラも本性というよりも相手に合わせた演技に映る。
特に今回はNANAの弱さが際立った。NANAは嘘をついて桂木廉を呼び出したものの、怒った廉に履いていた靴を投げられる。さらに偶然ボールをぶつけられ、芸能人と知った一般人に囲まれるという災難に見舞われる。韓国版と同じ流れであるが、小嶋の演じるNANAでは悲惨さが強調される。
その性悪ぶりから見落とされがちであるが、ヘイは実は可哀想な存在である。ファン・テギョン(日本版では廉)への想いが報いられことはなく、優しい態度をかけられることもなかった。韓国版では芯の強いヘイは悪役に固定され、本気の恋愛対象からは外れた。しかし、弱さを持ったNANAは感情移入の対象になる。主人公の恋のライバルとして韓国版以上に存在感を発揮しそうな小嶋に注目である。
(林田力)