遠い異国の地で、荒れ狂う海の中、どれほどの恐怖と絶望を感じたであろう。そんな彼らを救助したのは地元住民たちであった。当時の串本町は飢饉の真っただ中にあり、とても他者を助け、受け入れる余裕などない状態だったという。しかし、そんな中であっても地元住民たちは、わずかながらの食料を分け与え、布団や衣料を持ち寄り救助にあたった。大惨事の中にありながら、人間本来が持つ勇気と真心を感じさせられる。日本とトルコの友好に繋がる、民衆が築いた物語である。
2010年1月25日、「エルトゥールル号遺品発掘調査団」は、イギリスの1ポンド金貨、日本の1円銀貨、碇のマークの入った真ちゅう製のベルトのバックルを発見したと報告した。1円銀貨は損傷が激しく、かろうじて「一円」と読み取ることができる程度だが、金貨にいたっては刻印まではっきりと読み取れるほど状態は良い(海中で発見したダイバーはこれをコインではなく、「金色に光るもの」としか認識できなかったとか)。まるで、持ち主が早く発見してほしくて信号を送っていたように見えないか?
エルトゥールル号はこれまでにも、多くの遺品が引き上げられてきたが、「やはり乗組員の身に着けていたものが見つかると嬉しい」と語っていたのは調査団の方。
120年ぶりの青空と緑の大地に、金貨の持ち主は何を思うのだろうか?