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《キャバ嬢間違いだらけの武勇伝》 ある意味、キャバ嬢の勝ち犬? 利用したのはどちらか…

 「私は自分のお店を持ってオーナーママになるのが夢」と、いつも言っていたお店の最年長の愛さん(自称30歳、正式には35歳以上という声も…)が念願叶って自分のお店を持ってキャバ嬢をめでたく引退したのです。オーナーママにはなれませんでしたが、お金を出してくれる人が現れ、とりあえず“ヒモ付き”のオーナーになりました。

 この1年、愛さんは“金づる”と思しき太客には自分のお客でなくとも果敢にアタック。同伴・アフターはもちろんのこと枕営業までこなしていたというウワサはもっぱら…。でも、そのお客にお金がないとわかると、再び新たな金づるを求めて同伴→アフター→枕にというパターンに精を出すのです。
 だから同僚の間では「有料公衆トイレ」だの「トレジャーハンター」だのというあだ名で呼ばれていたのですが、本人はそんなことにはこれぽっちも気にしていませんでした。
 もちろん手当たり次第にお客へアプローチをかけるので、他のキャバ嬢ともトラブルになることも多く、お店が終わってからの乱闘騒ぎも時々勃発していました。
 そんな愛さんにも今から半年ほど前、週に1回山梨から上京すると必ず来店してくれる建設会社の跡取りで専務の望月光雄さん(仮名・41歳)が太客として付くようになったのです。

 初めて愛さんが接客した時は「山梨の山猿」なんて陰口を叩いていましたが、年齢が近いこともあってか、二人でよく盛り上がっていました。その専務が2度、3度と通い始め、愛さんをいつも指名するころからはヘルプも断り、二人だけの世界に浸ってイチャイチャしまくっていました。もちろん同伴→アフター→枕はすでに実行済みでした。
 この凄まじい身の変わりようは、キャバ嬢には必要なことかもしれませんが、私にはできません。
 愛さんと望月さんの仲がお店で公然のものとなるのにそんなに時間は掛かりませんでした。そしていつしか愛さんは望月さんの援助で念願のお店を都内に持つことになったのです。
 キャバ嬢仲間は羨ましさ半分、妬み半分である事ない事をウワサしていましたが、店長は年増の厄介払いができたと大歓迎でした。
 そして、愛さんからお店の開店案内が届きました。愛さんはサプライズだと言って辞める時もオープンする店の所在地を明かさなかったのですが、そこに記された住所は郊外の私鉄沿線のものでした。ほんとうにサプライズでした。
 「これって、都落ちっていうやつ…」と、みんなで言いながらも興味津々でした。

 そして開店の日、私と店長がお祝いに行きました。お店は駅前の飲食店街を通り抜けたところの飲食ビルの1階にありました。新規オープンらしくスタンドの花束が2、3本入口を飾っていたので、すぐに分かりました。
 真新しい外壁に鏡張りの重厚そうなドア、雰囲気だけは高級クラブのようです。そして店長がドアを開け店内に入っていく後を私も付いて中へ入りました。
 そして、艶やかなドレスとともに艶然と微笑みで私たちを迎えてくれたのは、愛さんではなく別の女性でした。そしてその女性の後ろから専務の望月さんが顔を出し、女性の紹介を始めたのです。
 「ママの綾香です。私のワイフです。お宅でお世話になった愛さんにはチーママを務めていただくことになりました」
 店長と私はお互い顔を見合わせて唖然としました。すると、愛さんが2人の若い女の子を連れて挨拶にきました。そして私の耳元で囁いたのです。
 「これで引き下がる私じゃないわよ。さんざん私を利用しといて雇われチーママはないわ。山梨の山猿は夫婦ともども山に返してあげるから。見てらっしゃい」
 愛さんの言葉には仕返しの決意がはっきりと感じられた。しかし、利用したのは愛さんも同じじゃないかと私は思った。雇われでもチーママに出世できたのは、よしとしなきゃいけません、愛さん。キャバクラでキャアキャア騒いでる歳でもないでしょうに…。

*写真は本文とは関係ありません
【写真提供】新宿ディアレスト

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