2022年度に、任務に必要な人員は24万7154人であった。
ところが実際の隊員数は23万3341人と、約1万4000人も足りていない。
特に有事の際に、最前線で働くことになる"士"とよばれる若者たちは、必要な人数の7割しかいない。
人員が1万4000人足りないということは、一個師団が6000~9000人だから二個師団分の隊員が足りないということになり、これはかなり大きな数字である。
中途退職する人も増えている。2012年度3615人だった退職者が、2021年度は5742人だ。中度退職者の66%が4年以内に辞めている。
中途退職する人の中には「パワハラ」や「いじめ」で退職する人も増加しているらしく、2020年3月1日、当時の河野太郎防衛大臣は
「パワハラ、いじめというよりは、もう傷害だろうという事件もあった。そういうものに対する処分が少し、その基準が甘いのではないか」
と、パワハラの厳罰化を運用することを明らかにしている。自衛隊のように集団で行動し、上下関係が厳しい環境では、いじめやパワハラが起きやすいのかも知れない。
現在、自衛隊では人員不足を解消しようと、女性隊員の活用を目指している。2022年3月末現在、約1.9万人(全自衛官の約8.3%)が女性自衛官だ。2012年3月末時点で全自衛官の約5.4%と比べると、こちらはずいぶんと増えているようだ。ただ、米国の女性兵士の割合は約15%だから、まだまだ少ないと言える。
ただ女性自衛官にはセクハラ問題が起こることがあり、ただいま裁判中のものもある。自衛隊幹部は頭を抱えていることだろう。
かつて、元防衛副大臣の長島昭久氏は、人員不足について、「本当に深刻だと思う。20年後、人からロボットに相当置き換えていかない限り、募集の強化で今の戦力機能を保っていくことは難しい」と、語っている。
いま、ウクライナではドローン(無人機)が大活躍している。ただしいまのドローンは人間が操縦しているので、将来はAI(人工知能)により、自分で動き自分で判断するドローンや戦車、ロボット兵が、自衛隊に必要となってくるのではないか。
ただ、いまこれらのAI兵器には「人間の判断を介さずに人間を殺させていいのか」という倫理的な問題がある。AI兵器はアルゴリズム(作業手順や計算方法)が判断する。そこに人間の感情はない。
それでも現在、AI兵器は各国でどんどん研究され採用されている。
これからも少子化で若者はどんどん減る。親が「子どもに就いてほしくない職業」第3位が自衛隊だ。今後もよほどのことがない限り、増える見込みはなさそうだ。
「外国人労働力を自衛隊に」という声まで出てきた。自衛隊の人員不足は、ある意味、将来の日本の姿なのかも知れない。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。