日本では連日多くのメディアがこの事件について報じていたが、海外ではどうなのだろうか。海外でも、アメリカやフランス、マルタ共和国といった国で一部メディアが事件について報じていたものの、日本のメディアのように男性の過去を深掘りすることなどはなく事件が簡単に紹介されていたのみだ。
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日本の誤送金のニュースが海外であまり注目されていない理由の一つは、海外では誤送金がしばしば起こっているからかもしれない。2019年9月にはアメリカ・ペンシルベニア州でとある夫婦の口座に、銀行の手違いで12万ドル(約1559万円)が誤送金されたと海外ニュースサイト『BBC』などが報じている。夫婦は複数台の車などを購入し、12万ドルのうちのほとんどを使い切った。銀行の返金の求めにも応じなかったことから、夫婦は窃盗罪などで逮捕されている。
また2017年4月にはアイルランドで当時23歳のシングルマザーの女性が銀行からの誤送金によって5万1000ユーロ(約708万円)を受け取ったことが報じられた。海外ニュースサイト『Mirror』などによると、女性は2人の子どものために衣服や靴などを買ったほか、毎晩、友人や家族を招いて外食をしたそうだ。銀行側が女性に返金を求めたものの無視してしまい、女性は訴えられ有罪が言い渡されている。
さらには2017年9月、南アフリカ・ケープ州で、当時27歳の女子大生が、誤送金によって1400万ランド(約1億1718万円)を受け取ったと海外ニュースサイト『EWN』などが報じている。送金元は国の奨学金制度機関で、学生に誤って送金してしまったそうだ。学生は機関に報告することなく、誤って振り込まれた金でiPhoneを購入したほか日常的にパーティーをして過ごした。その後、機関は返金を求める手続きを行ったが、返金がされたのか情報はなく、学生が逮捕されたという報道も出ていない。
日本では誤送金のニュースが報じられた際、世論は誤送金を受けた男性の非常識さを責める声が多く、男性が“昔からお金に執着していた”と男性の非を大々的に報じるメディアも多かった。しかし海外では今回の日本の誤送金のニュースに対して、日本とは全く異なる反応をしているようだ。
ネット上では海外から「悪いのは誤送金した側」「町側が無能」「男性が責められている日本の報道を見るたびに驚かされる」「勝手に人生を変えられた男性に同情する」「男性側が名誉毀損で逆に訴えることもできるかも」といった声が挙がり、誤送金をした側を責める声が多い。一部では「自分のお金でないのに使うなんて愚か者」と男性を批判する声もあるが、多くはない。
また事件が解決する以前は「お金は返ってこないだろう」「男性がお金を使っていても驚かない」などの声があり、決済代行業者の支払いによるもののいくらかの金額が返ってきたことに対して驚きの声があるほどだ。
海外の反応のように、男性は誤送金がなければ違う平穏な人生を歩んでいたかもしれない。しかしながらどんな理由があろうと他人の金銭を勝手に使用することは許されることではないだろう。
記事内の引用について
「Theft charges for couple who spent $100k from bank transfer mistake」(BBC)より
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-49643015
「Single mum on benefits went on "massive spending spree" after bank accidentally deposited £43,000 in her account」(Mirror)より
https://www.mirror.co.uk/news/world-news/single-mum-benefits-went-massive-10160158
「SIU TO INVESTIGATE WSU STUDENT AFTER R14M BUNGLE」(EWN)より
https://ewn.co.za/2017/08/31/siu-to-investigate-wsu-student-after-r14m-bungle