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ゆたぼんの「死んだらアカン!」訴えは逆効果? タブーとされるワケ、然るべき対応は

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画像はイメージです

 自称「少年革命家」の不登校系YouTuber、ゆたぼんが5日、自身の公式YouTubeチャンネルに「ゴールデンウィークあけても行くな」というタイトルで動画を投稿。連休明けに子どもの自殺者数が増えることについて触れ、「学校に行きたい子は行ったらいいし、行きたくない子は行かんでいい。でも、死んだらアカン!」と熱心に訴えた。

 また、「日本は子どもが自殺してしまってる数がどんどん増えていって、ほんまにひどい。子どもが自殺してしまってる国は絶対間違っている!」と主張して、最後に「人生は冒険だ!自由に生きよう!ゴールデンウィーク明けても死んだらアカン!」と締めくくった。ゆたぼんは4月、中学校への不登校を宣言し著名人からも意見を受けるなどネットを騒がせている。

 ゆたぼんの思想の賛否についてはさておき、「死んだらアカン!」というゆたぼんの決めゼリフには、臨床心理学的な観点から見て問題がある。

 実際の医療やカウンセリング、専門の相談窓口などにおいては、「死にたい」と相談してきた人や口に出している人に対して「死んだらダメだ!」と頭ごなしに否定することはタブーとされている。なぜなら、それまでにさんざん悩み、苦しみ、精神的に追い詰められて「死にたい」という気持ちになった人に対して、そう思うことさえ否定してしまうことによって、さらなる負担を与えてしまうことになるからだ。人は、思いを口にすることで解放感を得ることができ、一時的にストレスが緩和する場合もある。

 ところが、口にした言葉を否定されると、解放感を得るどころかストレスを感じてしまう。このように、いくら「元気を与えてあげたい」「自殺を防止したい」と考えていても、対応次第では逆効果を生んでしまいかねない。それがたとえ動画であっても、死にたいと考えている子どもが自分に向けたメッセージであると捉えれば同じことだ。

 自殺対策支援としてタブーとされる対応は他にもあり、一方的に価値観を押し付ける、むやみに励ます、話題をそらす、質問を連発するなどがある。

 では、「死にたい」と訴えている人には、どう対応すれば良いのだろうか?

 自ら命を絶ってしまった人の多くは、誰かに「死にたい」という思いを打ち明けているという。まずは、最後のシグナルとも言えるこうした重大な告白を、聞き逃したり、気まずいからといって流したりすることがないようにしたい。誰かに自分の気持ちを理解してもらうと安心するのと同じように、「死にたい」という気持ちを誰かに打ち明けるだけでも一旦落ち着けるということが多い。

 ​>>自殺報道による「ウェルテル効果」と「パパゲーノ効果」とは? 辛い気持ちを悪化させないための対処法<<​​​

 相手が「死にたい」と口にしたら、「そう思ってるんだね」と返すなど、思いを受け止めたことを相手に伝える。こうした、否定も肯定もせず「相手の思いや考えを理解する」という姿勢は、自殺対策支援以外でも、思い悩んでいる人やうつ病などの精神疾患を抱えている人との会話においても重要なポイントとなる。

 「死にたい」という重大な告白を受け、その後もそうした考えに至るまでの詳細などを相手が話してくれる場合は、ただ相手の話に耳を傾けて傾聴する。この時、共感を示す適度な相づちや、沈黙の時間も穏やかに待つなどの姿勢をとり、話しやすい環境を作るのが大切だ。「共感」と言っても、「自分もそう思う」「その気持ち分かる」といった安易な「同調」や「同感」ではなく、あくまでも「相手の感情を理解する」「そういう感情になった経緯を理解する」という感覚が必要だ。相づちは大げさでも相手の話す意欲をそぎ、単調でも興味がないという印象を与えてしまうことがあるため、声のトーンや相づちの種類に変化をつけるようにすると良い。

 つい自分の意見を言いたくなることもあるが、相手の考えを否定する内容である場合が多いため、一旦飲み込んでおくべきである。「相談に乗る」のではなく、あくまで「話を聴いて相手の気持ちを理解する」という姿勢が重要だ。

 こうして、傾聴と共感を意識した会話によって信頼関係が深めることができたら、「自殺はしない」と約束してもらうのが理想的だ。「ダメ」とこちらから一方的に否定するのではなく、本人が「しない」と選択することに意味があり、効力がある。たとえ一度きりの会話だったとしても、自殺を予防する効果が高まるだろう。

 これらの「傾聴」や「共感」はカウンセリング技術の一端であり、意識的に訓練することで自然にできるようになる。ただし、人の深刻な悩みを傾聴することは、自分自身にも心理的に大きな負担がかかりやすいため、相談者と一緒になって抱え込んでしまわないよう注意が必要だ。

 相談者があまりにも深刻な状態であったり、一度話してもなかなか楽にならない場合などは、相談者を精神科や心療内科などの精神科専門医や専用の相談窓口、心理カウンセリングといった専門機関につなぐことが望ましい。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

記事内の引用について
ゆたぼん公式ユーチューブチャンネルより
https://www.youtube.com/channel/UCMod1HDUu_SZslmDApR8zOQ/videos

厚生労働省、各都道府県では悩みを抱えた人の相談窓口を設けている。詳細はこちらから。

・厚生労働省  相談先一覧https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html

・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧)
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

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