偏頭痛や胃もたれ、下痢といった体の不調は、厄介極まりないもの。「できることなら簡単な方法で改善したい」と思う人も少なくないはずだが、そんな人たちにお勧めなのが、「中指もみ」である。
中指もみは、その名の通り中指をもんで刺激する健康法だ。1回1分ほど、中指を爪で刺激したり、指の腹でもんだりするだけなので、ベッドの中や仕事中など、いつでもどこでも手軽にできる。しかも、早ければ数10秒から1分で症状が改善することもあるので、不調を感じたらすぐに中指を刺激するとよい。
この中指もみを推奨しているのが、長年にわたって岡山と東京で治療を行っている、倉敷芸術科学大学客員教授で鍼メディカルうちだ院長の内田輝和先生だ。
「私の治療院には全国各地から患者さんが来院されますが、寒い季節になると『遠くから来るのは大変』という声をたびたび耳にしました。そこで患者さんが自分でできる『中指もみ』を考案し、推奨するようになりました」(内田先生)
なぜ中指なのかというと、この指が全身の臓器や器官に反映されている場所だからだ。つながっているから、中指1本を刺激するだけであらゆる不快な症状を防ぐことができるのだ。
★「反射区」を中指で刺激
中指もみのベースになっているのは、韓国に伝わる「高麗手指鍼」という治療法である。東洋医学の鍼灸理論に基づいて編み出された治療法で、「両手のひら、手の甲、指には全身のすべての臓器や器官が反映されている『反射区』があり、ツボと経絡(エネルギーの通り道)が全身に広がっている」という考え方を基本にしている。
中指もみが病気の予防や改善に役立つ詳しい原理については次号で説明するとして、まずは基本的な中指のもみ方について紹介していく。
「中指をもむ場所やもみ方は、体の不調や症状によって異なります。基本的には左手の中指をもみますが、目や腎臓、肺など、体の中に臓器や器官が2つあるものが対象の場合は、両手の中指を刺激します。また、肝臓は体の右側にあるので、右手の中指をもみます。さらに、体の片側だけに症状がある場合は、症状がある側の中指を刺激すると効果的です」(内田先生)
このように、中指もみは状況に応じて左右どちらの指をもむかが変わってくる。「痛気持ちいい」程度の力を目安に、中指を刺激していこう。
★基本的なもみ方を知る
中指の刺激の仕方は、「圧迫刺激」「振動刺激」「回旋刺激」に大別することができる。
「圧迫刺激」は、症状に合った反射区を爪で刺激する、中指もみの最も基本的なやり方だ。まずは反射区付近を爪で刺激し、「少し痛い」「痛気持ちいい」と感じる場所を探す。見つけたら、その場所に先ほどと同じく「痛気持ちいい」程度の感じで爪を立て、10秒間グッと押し続ける。そして、いったん力を抜いたら再び10秒間押し、これを1分間繰り返す。
反射区の範囲が中指の両側に広くある時は、部位の左右を叩くように爪でリズミカルに押す「振動刺激」を行うのがお勧めである。まずは圧迫刺激と同様に「痛気持ちいい」と感じる場所を探す。左右の反射区に爪を当ててツンツンと10回叩くように押し、これを1分間繰り返す。この時も、「痛気持ちいい」力加減を意識しよう。
そして、副腎の反射区のように広い範囲を刺激する場合は、爪ではなく指の腹を使う「回旋刺激」が効果的である。指の腹を反射区に当てて、グリグリと回しながら10秒ほどもみほぐし、1分間繰り返す。もんだ時に痛みを感じたら、少し長めにやってみよう。
◉よくある3つの症状を改善!!
【偏頭痛】
こめかみから目の付近が脈打つように痛み、場合によっては嘔吐などの症状が出る。頭痛は数時間から数日続き、女性に多い。まずは指先にある「脳」の反射区を押し、それから「首」で痛む場所の反射区を刺激しよう。1分ほどで症状が改善する場合もある。
(1):「脳」の反射区に爪を立てて10秒ほど押す(圧迫刺激)。これを1分間繰り返す。
(2):爪の根元から「首」の反射区にかけて、爪を立てて10秒ほど押す(圧迫刺激)。これを1分間繰り返す。
【胃もたれ】
胃の排出機能が低下すると、食べたものが胃の中にとどまりやすくなり、不快感が生じる。「胃」の反射区はもちろん、へその上にある「中脘」、「肩」〜「背中」の反射区を刺激して、機能アップを促そう。また、日常生活の問題点も見直したほうがよい。
(1):「胃」の反射区に爪を立てて10秒押し(圧迫刺激)、これを1分間繰り返す。次に仰向けに寝て、へそから指5本分上にある「中脘」を、両手の中指で10秒押す。これを3回繰り返す。
(2):「肩」の反射区に爪を立て、少しずつ動かしながら「背中」の反射区までリズミカルに10回押す(振動刺激)。これを1分間繰り返す。
【下痢】
下痢や軟便が何日も続く場合は、日頃から腸が冷えている可能性がある。「腸」の反射区を刺激したり、中指全体をほぐして腸の血流を促し、深部体温を高めよう。高齢になると胃腸の粘膜や筋力が衰えていくので、特に注意が必要だ。
(1):「腸」の反射区に親指の腹を当てて、10秒ほどもみほぐす(回旋刺激)。これを1分間繰り返す。
(2):中指を反対側の手の親指と他の指を挟んで持ち、「腸」の反射区を中心にして中指全体をこすって温める。
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監修/内田輝和先生
鍼メディカルうちだ院長。岡山大学医学部麻酔蘇生学教室東洋医学研究班、倉敷芸術科学大学生命科学部健康学科教授などを経て、同大学鍼灸専攻客員教授。「1分もむだけ!中指もみ 101の症状に効く処方箋」(わかさ出版)など著書多数。