確かに、滑膜(関節の裏打ちをしている膜)に強い炎症があると、水を抜いてもすぐに溜まり、たびたび抜かないといけないことがあります。
しかし、抜いたから水が溜まるわけではありません。結膜炎(目の結膜に炎症が起こる病気)が治っていないと涙を拭っても、また涙が出てくるのと同じように、炎症が続いているから水が溜まり続けるのです。
関節液は、関節軟骨の表面で滑りをよくするとともに、軟骨に栄養や酸素をしみ込ませる大切な働きがある粘っこい液体です。正常でも毎日、滑膜から、ごく少量の関節液が関節内にしみ出し、吸収されて循環します。
関節に水が溜まるのは、関節炎や変形性関節症など、滑膜の炎症が強い時です。これは目の結膜炎の時に涙がたくさん出るのと同じメカニズムです。涙は目を守るために流れますが、関節液も同じで、炎症が起きているから緩和のために出るのです。中には「関節液が溜まっているから関節が痛む」という方もいますが、関節液そのものが痛みを生じるわけではありません。
ですので、関節液をあまり悪者にしないでください。少量ならひとまず様子を見るだけでOKですが、あまり溜まると、歩きにくいことや、関節が緩むこともあるので、どうしても引かない時は整形外科クリニックを受診しましょう。
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監修/井尻慎一郎先生
井尻整形外科院長。医学博士。著書・監修書に『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』(創元社)、『筋肉のからくり 動かし方を変えるだけでコリと激痛が消える!』(宝島社)などがあるほか、論文、講演、テレビ出演などで活躍中。井尻整形外科HPはhttps://ijiri.jp