前回は、不調に対応する部分に使い捨てカイロを貼ることで血流が促進され、体の不調が改善されることを説明した。
寒さが厳しいこの季節、使い捨てカイロは体のあちこちが痛む人にとって大変ありがたいアイテムだ。肩や腰、首の後ろ側などに貼ることで、肩こりや腰痛、首の痛みなども改善する。
使い捨てカイロの活用を勧める東京有明医療大学教授の川嶋朗先生は、その貼り方について次のように述べる。
「カイロを貼る時間の長さは、心地よいと感じる範囲、汗をかかない程度であれば、貼りっぱなしでも問題ありません。熱いと感じるような温度だと、ストレスで交感神経が刺激され、逆効果になってしまいます。また、カイロは基本的にいつ貼っても構いませんが、冬場は外出時に寒さを感じやすいので、出かける前にカイロを貼って全身を温めるのがお勧めです」
ただし、使い捨てカイロの使用にあたっては、注意すべき人がいる。例えば、糖尿病などで神経障害を抱えている方は、熱さを感じ取る機能が低下していることもあり、やけどの恐れがある。温度感覚に障害がある場合は、あらかじめ医師に相談しておいたほうがよい。また、カイロを使用中にほてったり、のぼせたりしやすい方は、早めにカイロをはがすようにしよう。
★ツボを温めて効果アップ
首の痛みを改善したい時に、最も効果的な“特効ゾーン”は、首の後ろ側である。首のこりや痛みは、首の骨や筋肉に負担がかかり、周辺の筋肉が硬くなることで生じやすくなる。そのため、首にカイロを貼ることで血流が促進され、さらに筋肉をほぐすことで痛みも解消していく。
「しこりを感じている首すじを優しくなで下ろすだけで、よじれた筋肉を本来の状態に戻したり、血液を心臓のほうに戻して全身の血流をよくしたりします。気持ちいいと感じる程度の強さで、上から下へ10回程度さすることを毎日行うと、こりの解消につながります」(川嶋先生)
首だけでなく他の部位でも、軽く筋肉をつまんで離し、心臓に向かって軽くなでることで、同様の効果が得られる。
また、首の痛み改善効果をさらに高めたければ、「四瀆」や「内関」といったツボを温めるとよい。ちなみに、肩こりは「曲池」、腰痛は「腰腿点」「委中」のツボ周辺にカイロを貼ることで、改善の効果が高まる。
★肩こりや腰痛にも◎
肩こりは首や肩、背中周辺の筋肉の緊張で起こる。肩のゾーン(肩の背面)に貼るのが効果的だ。左右の肩甲骨の上部に貼ると、肩周辺の血のめぐりがよくなり、筋肉の緊張がほぐれて肩こりが改善されていく。
腰痛に有効なのは、へその真裏にあたる腰の中央部。腰の筋肉の緊張で痛みが発生しやすいので、まずは腰のゾーンを温めてみよう。ただし、ぎっくり腰の直後など、局所が熱を持っている場合は、しばらく様子を見てから試したほうがよい。
股関節痛でお悩みの方は、尻の側面部に貼るのがお勧め。加齢や姿勢のクセなどによって股関節の骨がすり減ったり、変形したりするので、その部分を温めて痛みを解消させよう。
他にも、ひざ痛はひざとひざの裏側に貼るのが効果的だ。ただし、一般の使い捨てカイロを肌に直接貼ると低温やけどの危険がある。“必ず着用した衣類の上に貼る”ようにしよう。
また、局所が腫れて熱を持っている場合は、控えたほうがよい。
◉使い捨てカイロ 貼り方のポイント
*直貼り禁止。衣類の上から貼る
*痛む局所が熱を持っている時は、使用を控える
*心地よいと感じる間は貼ったままでOK
*熱いと感じた時は使用をやめる
*温度感覚に障害がある人は、医師に相談してから貼る
【首の痛み】
◉特効ゾーン
(1)首の後ろ側 (2)四瀆 (3)内関
※(2)は、手首とひじの中間から、指の幅2本分ほど、ひじ側に上がった箇所にあるツボ。(3)は、手首を曲げたときにできる横ジワの中央から、指の幅3本分ほど、ひじ側に上がった箇所にあるツボ。(1)だけでもよいが(2)(3)に貼ると効果が高まる。
【肩こり】
◉特効ゾーン
(1)肩の背面(2)曲池
※(1)は、左右それぞれの肩甲骨の上にあたる箇所。(2)は、ひじを曲げたときにできる横ジワの親指側の先端にあるツボ。(1)だけでもよいが(2)に貼ると効果が高まる。
【腰痛】
◉特効ゾーン(1)腰の中央(2)腰腿点(3)委中
【股関節痛】
◉特効ゾーン(1)尻の両サイド
※(1)は、尻の側面にあたる左右2箇所(骨盤の上部周辺)。
【ひざ痛】
◉特効ゾーン
(1)ひざ(2)ひざ裏
※(1)(2)ともに、必ず左右両方に貼る。
※(1)は、へそのほぼ真裏となる腰の中央部。(2)は、両手の甲側に2箇所ずつあるツボ。ツボの1箇所目は、人差し指と中指の間の付け根と手首のシワの中間にある。2箇所目は、薬指と小指の付け根と手首のシワの中間にある。(3)は、ひざ裏のシワの左右中央にあるツボ。(1)だけでもよいが(2)(3)に貼ると効果が高まる。
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監修/川嶋朗先生
一般財団法人東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当医師。東京有明医療大学教授。西洋医学、東洋医学、補完・代替医療の立場から診療を行う。『川嶋流「温活」で心とからだの万病を防ぐ』(メトロポリタンプレス)など著書多数。