観光客に便利な路線は、環状線の2号線と観光地を通る3号線と4号線だ。区間最低額2000W(約160円)で結構乗れる。スイカと同じ電子マネー「T-Money」があるので、さっそく作ってみることにした。
地下鉄改札口脇にあるT-Moneyチャージ器の横の窓口でカードを購入。窓口の写真を撮った。すると3〜4人の駅員に取り囲まれ、大声のハングルでまくし立てられた。記者はハングルが分からないが、怒っていることは充分理解できた。日本語とつたない英語で理由を聞いたが全く通じず、怒りは一向に収まらない。連行されるのだろうか…。かなりの不安がよぎった。
そのとき背後から「日本の方ですか」と女性の声。イントネーションからして韓国の人らしい。彼女は李(イー)さんといって日本人向けの観光ガイドの資格を持っていて今日はたまたま休日で通りかかったという。
「韓国では交通機関とか軍事施設は撮影禁止なのです。あなたは北の工作員に間違われたのでしょう」と言い、駅員に弁明してくれた。崖っぷちから救ってくれた女神のように感じた。
李さんは東大門市場に行くところというので、同行を願い出た。神様にはどうしても甘えてしまう性格なのだ。
ソウルで日本語、英語が通じるのはホテルや観光地だけ。しかし日本語の路線図はどの駅でも簡単に入手でき、構内表示も英語と漢字表記が徹底されているので一人でも目的地へ行けたかもしれない。車内は広く、この時間は立っている人もまばらだった。「車内撮影は禁止です」。李さんはこちらの意図を察したように釘をさした。
東大門市場に到着。地下道でファッションビルへ向かう。洋服や雑貨店が並びさまざまな日本語で呼びかけてくる。中には「本当の贋物があるよ!」なんていう意味不明なものも。
ビルに入ると整然とはしているが、おびただしい数の店がぎっしり詰まっている。これだけの商品が本当に流れるのだろうか。まばらな客を見て思ったが、本当に賑わうのは夜中から明け方にかけてとのこと。
東大門市場のファッションビル群はデパートのように見えるが、本質的には問屋だ。韓国中の商店が仕入れに来るため、小売りをしない店もある。店を閉めてから仕入れに来るので、夜半から翌朝までが賑わうのだ。
今ここにさらに巨大なファッションセンターが建築中である。ウォンの暴落にはじまり、あまりよい話のない韓国経済だが、エネルギッシュな現実経済を見るとまだ韓国の経済発展は進むと実感した。