この祭は名の通り、桜の小枝を交換するという優雅な行事。太宰府天満宮などの「鷽替え」と同じ「換物神事」の一種で、“交換すること”によって福を呼び、良縁を招くものだ。金崎宮では花見に訪れた男女が、桜を交換して想いを伝えあったといい、“花換えをしたカップルは幸せに恵まれる”と広まった。とはいえ、参拝は女性だけでも大丈夫。訪れた日も、恋の願いを胸に秘めた乙女たちがつめかけていた。
祭神は、後醍醐天皇の皇子・尊良親王と恒良親王。当時ここは山城(金ケ崎城)で、新田義貞に奉じられた両親王が拠った縁による。また後には、織田信長の浅井・朝倉包囲網の突破点ともなり、歴史的にも名高い。
祭の作法は簡単。神社で授与される桜の小枝を、境内の福娘と「花換えましょう」の言葉とともに交換するだけ。この時、花に願いを託すことを忘れてはならない。声をかけるのはちょっぴり気恥ずかしいが、願い事成就のためにはそんなことは言っていられない。
桜は交換すればするほどによいという。古くは、境内で行き交う人々の間でいく度も交わされたとか。手から手へと花が舞う夢のような光景に、鎮まる御霊はどれほど慰められたことだろう。優美な祭の中に、氏子たちの親王らへの深い尊敬の念を見た気がした。
今年の祭は4月15(木)まで。期間中、夜桜ライトアップや抽選会のほか、恋の成就祈願祭なども開催される。
(写真「『花換えましょう』と交わされる桜」)
神社ライター 宮家美樹