2002年9月17日、小泉純一郎は日本国総理として戦後はじめて北朝鮮の地に足を踏み入れた。金正日総書記と会談し、「日朝平壌宣言」に署名した。「近くて遠い国」から「近い国」への布石となるはずだった。
安倍政権になって以降、北朝鮮とは緊張関係が続いている。金正日総書記は安倍突発辞任に伴う日本国内の政情をどう見ているのだろう。そんな折、「北朝鮮では5年経った現在でも小泉訪朝を記念した切手が売られている」(北朝鮮ウオッチャー)との情報をキャッチした。
本紙が入手したのはいずれも金色の縁取りがされた大型切手だ。タバコ大サイズの120ウォン切手には調印シーン、150ウォン切手には互いに固い表情ながらもがっちり握手する小泉・金正日両首脳の記念写真がプリントされている。西暦と北朝鮮暦入りで「DPR KOREA」の文字を刷り込んでいる。
平壌市内の高麗ホテル近くにある切手展示場内で売られ、北朝鮮の人々も買うことができるが、実際には主に外国人観光客向けのお土産という。日本国内の切手コレクターも注目の一品だ。
評価はともかく、国家は無駄と思うことをしないもの。北朝鮮のような国ならばなおさらだ。切手は「朝鮮切手社」の発行で、もちろん国家が統括している。北朝鮮にとって、小泉訪朝は記念切手にするほどの出来事だったわけだ。
小泉訪朝により金正日総書記は拉致を認め謝罪したが、伝えられた拉致被害者の安否情報に日本国民は衝撃を受けた。北朝鮮非難の声は高まり、日朝間のゴタゴタはその後も続くことになる。
06年9月、小泉勇退により新政権が発足。首相に就任したのは小泉訪朝団に同行し「謝罪がなければ平壌宣言に署名などせず、日本に帰るべきだ」と強硬に主張した安倍晋三だった。
首相就任後の所信表明演説で安倍は「拉致問題の解決なくして国交正常化はない。〈中略〉すべての拉致被害者の生還を強く求めていく」と高らかに宣言した。自らを本部長とする「拉致問題対策本部」を設置し、解決に意欲を見せていた。このころは、まだ威勢が良かった。