試合後、藤浪をかばっていた矢野燿大監督(50)だが、内心は違うようだ。
「その翌日、藤浪はブルペンで投球練習に臨みましたが、福原忍、安藤優也投手コーチも集まり『3コーチ』が指導する異様な光景となりました」(在阪記者)
秋季キャンプで、投手陣の全面指導を託されたのが、山本昌臨時コーチ(54)だ。これは、矢野監督が直々に指導を要請したもので、しかも福原、安藤両投手コーチに、「口出し厳禁」も通達していた。これは、指揮系統の一本化、投手陣を惑わせないための措置だが、それで藤浪が蘇生できなかったとなれば話は別。矢野監督は自身の発言を撤回し、投手コーチ総出で藤浪の指導に当たったのだ。
「ですが、山本氏の指導は好評です。他の多くの投手が手応えみたいなものを掴んでいました」(同)
練習後、矢野監督とコーチ全員によるミーティングが行われる。トラの若手投手陣は山本氏を“出待ち”し、「ご飯、連れてってください!」と、おねだりしていた。短期間でここまで選手のハートを鷲掴みにした臨時コーチは、山本氏が初めてだろう。
「正規のコーチは面白くないでしょう」(球界関係者)
好評につき、山本氏の“延長”も決まった。来年春のキャンプでも臨時コーチを務めてもらう。しかし、こんな声も聞かれた。
「山本氏は解説者として、関西の情報番組などのレギュラーを持っています。今回の臨時コーチも、矢野監督の『無茶ぶり』によるものでした。シーズン終了後に電話で頼まれ、慌ててスケジュール調整していました。来春のキャンプにしても、山本氏はレギュラー番組の仕事に加え、沖縄・宜野座の一軍、高知県安芸の二軍の両方を回ることになります。当然、その交通費は球団の負担となります」(同)
指導の延長を決めたのは、今秋キャンプの最重要テーマだった藤浪の再生が果たせなかったからだ。
「阪神も藤浪再生のラストチャンスと見ているのでしょう。単純な話、阪神は今季69勝しましたが、ここにもし『藤浪の2ケタ勝利』があったら、原巨人(77勝)を上回って優勝できましたから」(同)
ただ、藤浪のことを思い、口出し厳禁を通達した矢野監督の立場は苦しい。
藤浪自身にとっても、来春のキャンプがラストチャンスとなる。
当然、正規のコーチ陣たちも、この先も藤浪が変わらないようなら、臨時コーチを呼んだ矢野監督に不信感を持つだろう。もっとも、再生したら、「今まで何をやってたんだ!?」と酷評されるだろうが…。
いずれにしても、藤浪にとって、もはや“次”はないということだ。