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鳥谷敬退団で阪神監督候補に浮上した藤川球児

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提供:週刊実話

 球児がトラを仕切る。そんな近未来像が見えてきた。

 去る12月10日、阪神のべテラン・藤川球児(39)が契約更改に臨み、6000万円増の2億円(推定)で一発サインした。今季は56試合に登板し、4勝1敗16セーブを記録。クローザーのポジションも奪い返し、満を持しての昇給提示だった。バラ色のオフに気をよくしたのか、藤川が気になる発言をしたのは、更改後の会見だった。

「一番乗りで補強したチームが勝ちましたからね。パ・リーグもどんどん補強し始めているし」

 これは“球団批判”と言っていい。

 今オフの阪神は、早々と国内FA市場には参戦しないことを表明。現役メジャーリーガーのジャスティン・ボーアを獲得はしたが、藤川は「積極的な補強も必要」と訴えたのだ。

「補強と育成の両方が必要だ、と。今季の巨人は補強に成功し、その結果、優勝を手にし、若手を試合で起用できた点も見逃せません。それを目の当たりにした藤川は、契約更改の席上でも補強の必要性を訴えたのです」(在阪記者)

 藤川の会見終了直後、谷本修球団本部長が記者団に囲まれた。藤川の発言をぶつけられると、「エヘヘ」と苦笑い。別に怒っているようでもなかった。藤川と球団の間で意見が一致した部分もあったのだろうか。

「一歩間違えたら内部批判であり、育成を推し進めている矢野燿大監督の否定にもなりかねません。悪くとらえられなかったということは、球団が『どう思う?』と藤川に話を振ったのかもしれません」(球界関係者)

 この藤川の契約更改と前後して、阪神ナインに「ある情報」が寄せられていた。直接か、人を介してかは不明だが、「鳥谷敬の去就が決まった」と…。正式発表はまだ先になりそうだが、この情報が阪神ナインに一斉に広まり、鳥谷へのエールと同時に「もう阪神の選手ではないんだ」と、惜別の思いを新たにしたという。

 藤川はこのマル秘の一報を聞き、「自分がもっと前に出てチームをまとめていかなければ」という思いを強くしたのかもしれない。

「藤川は自主トレシーズンになると、若手投手を連れて行き、いろいろとアドバイスを送っている先輩の1人です。若手投手からの信頼も厚く、特に’16年に福原忍、’17年に安藤優也の両ベテランリリーバーが引退してからは、ブルペン全体のまとめ役でした。40歳の能見篤史もいますが、投手陣をまとめているのは藤川です」(同)

 現在の阪神でニラミを利かせられるのは42歳のベテラン福留孝介とキャプテンの糸原健斗で、リーダー的な性格なのは梅野隆太郎だと言われている。しかし、糸原は27歳、梅野は28歳と若く、福留は外様だ。

 他に、岡﨑太一が人望、人柄で抜きん出ているが、今季は一軍での試合出場がない。名コーチになるかもしれないが、鳥谷のような「将来の監督候補」「生え抜きの幹部生」となると、野手では適齢期の人材が見当たらないのだ。

「鳥谷がいなくなり、近い将来、監督を託せる生え抜きもいなくなってしまいました。球児に白羽の矢が立てられたと見るべきです」(前出・在阪記者)

 また、今回の“補強必要論”に阪神ナインも「よく言ってくれた」と、好意的に受け止めているそうだ。「藤川時代」の到来だ。

 その藤川の野球観について、こんな話も聞かれた。クローザーの座を奪い返した努力はもちろんだが、ハイスペックな野球頭脳の持ち主でもあるという。

「藤川が並みのピッチャーではないと印象づけたのは、阪神に復帰した’16年シーズンです。金本知憲監督(当時)は『先発で調整していればリリーフもできる』とし、その方向で調整させました。そして、先発で結果が出せなかったから藤川はスゴイという話になったんです」(前出・球界関係者)

 どういうことか。藤川は野球の怖さを知り尽くしたベテランだ。1球でゲームを崩壊させてしまう恐怖も体験してきたから、ピッチングも慎重になる。そのため、際どいコースに投げ、カウントが苦しくなっていく。その姿が若手に影響を与えた。

 先発でのピッチング、失敗を見て、逆にナインたちは「勉強になった」と感心したそうだ。

「リリーバーに返り咲き、直球がまた速くなりました。自主トレ期間中の走り込みは相当の量ですし、近年の阪神は監督ばかりに注目が行くので、落ち着いてしっかりと自分の調整もできたようです」(前出・在阪記者)

 クローザー復活にもハイスペックな野球頭脳が活かされていた。全盛時の球速はないが、バッターボックスから見た感覚では当時に近いものがある。フォークボール、カーブを多投し、ストレートを速く見せるテクニックも駆使している。

「故障経験があるから、調整に関する引き出しもたくさんあります」(同)

 新幹部候補生としては、うってつけの人材なのだ。

「フォークボールの投げ損ねを故意に投げ、若い梅野、坂本誠志郎の捕球技術の高さをベンチにアピールしたこともあります。そんな気の遣い方もできる」(同)

 藤川は’98年のドラフト1位で、松坂世代だ。鳥谷の流出は痛いが、捕手出身の矢野監督は藤川の投球テクニックを知っている。投手が仕切るのはよろしくないとする考えもあるが、藤川には人望もある。藤川の代名詞“火の玉”復活で、トラの再建は加速しそうだ。

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