外国人選手、特にヨーロッパ勢は長い手足を活かした攻撃を得意とし、近年は精神的にも日本独自の忍耐や強い信念を身につけてきている。今大会でも日本人選手を圧倒する場面が多く見られたが、最後まで緑健児代表の負けじ魂を継承し、見事に優勝を果たしたのは、島本雄二選手と南原朱里選手だった。
そこで、空手母国の威信を守った日本人の男女2人に、特別インタビューを敢行。まずは、世界大会2連覇の偉業を成し遂げた島本選手に話を聞いた。
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――優勝した瞬間は、どんな気持ちでしたか?
島本 うれしかったですが、正直、ほっとしました。やはり大会前は相当なプレッシャーがありました。
――前回の優勝から今大会まではどうでした?
島本 非常につらい4年間で、気持ちを持ち続けるのが大変でした。前回は無我夢中でしたが、今回は勝つことのみを考えてきました。
――危機を感じた試合はありましたか?
島本 対戦した全選手が強くて大変でしたが、中でも加藤大喜選手との試合は危なかったですね。技、精神面で優れた選手です。もちろん決勝のマズール選手も強くてキツかったです。
――セコンドには白血病の治療中の鈴木国博さん(第8回世界大会王者)がつきましたが、力になりましたか?
島本 鈴木先輩には治療中にもかかわらず、アドバイスをいただきました。また、地元広島のサポートの方々から勇気をもらいました。自分一人ではなく、まわりの協力があってこその優勝です。
――後輩たちに伝えたいことや今後の空手について目指すことは?
島本 闘ってきた姿で、息子や生徒たちに何かを伝えられたらと思います。これからの大会への挑戦についてはゆっくり考えたいですが、自分のできる範囲でフルコン空手を広めていきたいと思います。
女子では南原朱里選手が、念願の初優勝を果たした。
――優勝した瞬間はどうでしたか?
南原 本当にうれしかったです。4年前の準優勝から1年間は負けが続いて、自分でも気持ちがネガティブになってしまい、つらい時期がありました。でも、周囲の応援のおかげで、夢が世界チャンピオンであることを思い出しました。
――脚を痛めてしまったそうですが…。
南原 前日に肉離れになってしまい、島本選手のサポーターにケアしていただき、試合を続行することができたんです。試合中はアドレナリンが出るので、痛みは感じませんでした。
――強敵はいましたか?
南原 全試合がしんどかったですね。4年前は何も考えずに闘っていましたが、今回は自分の欠点などを見据えて稽古してきたので、一戦、一戦に冷静な気持ちで挑めました。
――後輩たちに伝えたいことはありますか?
南原 続けていくこと、諦めないことが大事。諦めずに頑張れば夢がかなう。私自身、負けたことにも意味があったと思いますので。
――今後の目標について教えてください。
南原 フルコンタクト空手の認知度を上げていきたいです。そして、また来年の5月の大会に向けて頑張っていきたいと思います!
最後は緑健児代表に、大会総評を。
緑 南原朱里は4年前の悔しさをバネにして挑み、肉離れというアクシデントを乗り越えて優勝しました。島本雄二は2連覇という重圧の中、覚悟を持って挑んだ結果の優勝です。2人とも4年間の努力の賜物ではありますが、日本人選手が男女とも優勝できたのは、大勢の方の応援が後押ししてくれた結果でもあります。
両選手の活躍は、これから空手を志す子供たちの目標になるでしょう。2021年にはポーランドで、フルコンタクト空手の世界大会が開催される予定です。
今大会は大勢の強豪が参加したこともあり、両日で1万人以上の観客を動員して大成功を収めました。現在、新極真会への加盟国は101カ国ですが、さらに110〜120カ国と参加国を広めていきます。そして、ますます国内外で空手を盛り上げたいと思います。
全試合本戦決着の完全優勝で
大会2連覇を達成した島本雄二
緑健児代表と世界大会を制した島本雄二、南原朱里
4年前よりも力強さを増し、
悲願の初優勝を遂げた南原朱里
構成●飯塚則子 試合写真提供●新極真会