「貯金10」をさらに増やしながら独走する巨人が見据えているのは、優勝の先。来季で契約が満了する原辰徳監督(62)以降のチーム体制にある。
そんな中、次期監督の有力候補だった松井秀喜氏(46)の「招請断念情報」が伝わっている。
「発端は、巨人の本拠地球場問題。メジャーリーグに転身し、今もヤンキースのGM特別アドバイザーを務める松井氏が巨人の監督受諾の条件としていたのが、メジャー流のボールパーク建設だった。都内に天然芝の自前の球場がほしいという希望。メジャーでは屋根付き球場は不人気で、開閉式を除き姿を消した。新型コロナウイルスの影響で世界中が“青空型”に方向転換する中、巨人が逆の方向に舵を切ったことで、松井氏との間に亀裂が生じたようだ」(スポーツデスク)
読売新聞グループ本社と巨人軍、東京ドームの3社は7月20日、都内で共同会見を開き、東京ドームを100億円かけて大改修すると発表した。観客席付近の空気を1時間に3.7回換気させ、コンコースに大型送風機30台を設置するコロナ対策や、メーンビジョンの超大型化、完全キャッシュレス化などを段階的に3年がかりで行い、「世界トップクラスの清潔・安全・快適なスタジアム」に改修するという。
’88年に開場した日本初のドーム球場も、今年で32年目。雨水が漏れ出すなど老朽化が進み、巨人は松井氏の意向に沿う形で、東京の一等地・銀座に近い築地市場に新球場を建設する計画を進めていた。好感触を得ていただけに、松井氏側からすれば突然、梯子を外された格好となる。
「日本でも横浜DeNAやソフトバンク、楽天などが成功を収めているように、自前の球場をボールパーク化し、試合以外の娯楽も提供する業態が主流になっている。現在、日本ハムが約600億円をかけて(北海道)北広島市に建設中の新球場もそう。これにならって、巨人ファンの多くが独自の新球場をと願っていたが、コロナ禍の中で屋根の開かないドームとは…。正直、残念な思いが強い」(巨人OBの野球解説者)
背景にあるのが、新型コロナの感染拡大で、東京五輪の中止が決定的になっていることだ。来年7月に延期された東京五輪までちょうど1年となったが、今も世界各地で感染者は増加傾向にある。国民の関心は、五輪開催よりコロナ対策。NHKが7月に行った世論調査でも「さらに延期すべき」と「中止すべき」と答えた人が66%に上り、開催は困難になりつつある。
五輪の参加選手は約1万人、大会関係者や競技関係者も含めると約35万人を数える。さらに、数百万人もの観戦者が200を超える国と地域から東京に集まる。今のところ、「日本型」の新型コロナでは重症になるケースは少ないが、死者が多い「北南米型」が入り込めば、深刻な事態に一変するのは必至だ。
「政府が6月に五輪組織委員会へ提出したコロナ対策案では、選手や大会関係者、観客の全員にPCR検査を実施するとしています。プロ野球が月に1度のペースで行っているPCR検査の費用は、1人当たり約2万円で、試算すると、検査だけで約20億円。しかも相当数の陽性反応が予想され、選手村だけでなく病院、ホテル、交通機関が大混乱する可能性も…。公式発表は10月というが、政府首脳にはIOC(国際オリンピック委員会)から非公式に開催中止を伝えられているという情報も入っています」(五輪組織委関係者)
さらにこの影響をもろに受けているのが、東京五輪に合わせて、商業施設や宿泊施設を含め総工費1000億円を投じて進められている明治神宮外苑一帯の再開発だ。その中心が新国立競技場であり、五輪後に建て直す新神宮球場と新秩父宮ラグビー場。神宮の森を世界的なスポーツのメッカにし、都内一の集客エリアを創設する計画である。
これが実現すれば、プロ野球の人気もフレッシュな風が吹く「東京スワローズ」に移行してしまう。それを危惧した読売新聞グループは、神宮球場に近い水道橋を離れて銀座エリアに新球場を建設し、松井新監督の下で迎撃する準備を進めていたのだ。
「しかし、新型コロナの感染拡大で東京五輪は延期・中止が濃厚で、明治神宮外苑一帯の再開発も霧散…。環境が一変し、ゴジラの後継者となる生え抜きの4番打者・岡本和真が育ったことで、巨人は自前の新球場建設を先送りする形で東京ドームの大改修に転じたのです」(前出・デスク)
これで明らかなのがポスト原監督レースからの松井氏の脱落だ。「ボールパーク新球場」は松井巨人の有力な判断材料になっていたからである。
この方向転換に伴い、巨人は若手育成から再びFA戦略にスイッチするという。新球場建設に備えて蓄えてきた資金を使い、ヤクルト・山田哲人内野手、広島・大瀬良大地投手、中日・大野雄大投手らの獲得に乗り出す。
「最高値の山田にしても、6年35億円程度」(同)
1000億円規模の自前新球場建設を思えば、格段に安上がり。ポスト原レースは混沌さを増していく。