巨人の坂本勇人内野手(31)と大城卓三捕手(27)に新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたことを重視した日本プロ野球選手会は、15日に選手会臨時大会を開き、NPBに「全選手のPCR検査」を求めるという。
選手会が問題にしているのは、12球団のPCR検査への足並みが揃っていないことにある。巨人は開幕後も定期的にPCR検査を実施するとしているが、全球団の実施でなければ、球団間に不公正さが生じる。
「高額の出来高契約をしている選手やクビがかかっている選手は、多少体調に異常があっても申告しない可能性があります。検査の必要がないと判断された選手でも、体調不良を訴えれば自宅待機となり、FA期間の計算や年俸更改に直結するんです。症状がないまま同居家族が感染している場合もあり、知らぬ間に他の人にうつしてしまう危うさも…。残された時間は少ないですが、PCR検査の全選手実施は開幕への最低条件です」(選手会関係者)
昨季のシーズンMVPと、今季の開幕捕手がコロナ禍に巻き込まれた巨人だが、実はこれまで、どこよりも感染症対策に力を入れ、主導的な役割を演じてきた。
スクリーニング(ふるい分け、精選)方式を打ち出し、5月29日から31日の間、新型コロナの感染歴を調べる抗体検査を実施。全91選手やチームスタッフら218人の希望者を対象に、都内の大学病院の研究に参加する形で検査を行い、新しい感染防止への取り組みを示していた。
「全国的にPCR検査が受けられない状態が続く中で、プロ野球の全選手検査は現実的ではない。そこで巨人は、スクリーニングでPCR検査につなげる方式を打ち出したのです。この“巨人モデル”がスタンダードになれば、早期開幕につながる。現在、抗体検査を実施しているのは巨人とソフトバンクの2球団だけだが、唾液を使ったPCR検査も認可されたことから、1週間もあれば、選手会が求める全選手実施は可能だろう」(スポーツ紙デスク)
ただ、その第一関門となる抗体検査で、坂本と大城、スタッフ2人の計4人に新型コロナ感染から回復したことを示す「IgG抗体」が検出されてしまった。念のため行われたPCR検査では、両選手に陽性反応が確認され、今回の騒動に…。
幸い、保健所が認定した両選手のチーム内外の濃厚接触者26人、さらに一軍選手、監督、コーチ、スタッフ全員が、PCR検査を受け「陰性」の判定を受けた。坂本と大城も入院先の医療機関で複数回の検査を受けて陰性になったと発表されており、近く医療機関や保健所と相談して戦列に復帰するという。
気の毒なのは、“陽性期間”にあった坂本と大城が出場していた3日の練習試合で対戦した西武の選手たちだ。今のところ、発熱などの症状を訴える選手は出ていないが、全選手がPCR検査を受けないことには不安は尽きない。今後、他球団の選手にうつしてしまう可能性も残してしまった。
一方、坂本らの陽性反応が確認された翌4日には、ヤクルトの昨季の新人王・村上宗隆内野手とスアレス投手に、体温が37度を超えたことが発覚。球団は両選手にPCR検査を受けさせ、2人とも陰性が確認されたものの、選手、球団がいかに神経質になっているかが分かる。
しかし、巨人のように総がかりでPCR検査を行えば、主力選手が引っかかり、混乱が生じるのは避けられない。巨人がそれを承知で実施したのは、実は「坂本対策」が背景にあったという情報もある。
「今年3月、阪神の藤浪晋太郎投手に、プロ野球選手で初となる新型コロナウイルス感染が判明した当時から、インターネットの書き込みで“次はこの男”と目されていたのが坂本でした。感染源として懸念される夜の街を飲み歩く姿が何度も目撃されており、メディアを賑わせてきたからです。しかも、今年1月の自主トレ中にはインフルエンザB型を、2月の宮崎キャンプでは同A型を発症し、一時離脱。3度目はさらに“超大物”を引き寄せてしまった。その意味では、坂本に陽性が判明してもさもありなんですが、今回の件が相当こたえたのか、野球に取り組む姿勢が一変したそうです。原監督も嬉しい誤算と苦笑している。まさにあぶり出し効果です」(巨人OBの野球解説者)
もう一つ、見逃せないのが、読売新聞グループが総合物流企業のSBSグループと提携し、宅配事業「YCお届け便」の全国展開を図っていることだ。
新型コロナで日本経済が大打撃を受ける中、物流の世界で一人勝ちしているのがアマゾン。そこで、読売グループは通販事業者などから集荷した荷物を専売店に持ち込み、朝夕刊と一緒に家庭に配達するという企業戦略に傾注しているのだ。
「宅配事業の悩みはドライバー確保と拠点の設置。それらを新聞販売店は兼ね備えている。あとはアマゾンに負けない宅配業務での知名度を上げるだけ。そのためにはプロ野球が1日も早く開幕し、巨人軍に活躍してもらう必要がある。PCR検査に力を入れるのもそのため」(流通業界事情)
とはいえ、東京では相変わらず毎日20人程度の新規陽性者が確認されており、史上初の「東京アラート」まで発動。球界からこれ以上の陽性反応を示す選手が現れれば“開幕ドタキャン”は避けられない。