「もし通常通りに開催されていたら、桐生が愛用する新シューズも注目を集めていたかもしれません」(スポーツ協会担当記者)
その新シューズとは、靴底にトラック種目に欠かせないピンがない。かといって、通常のゴム底の運動靴とも異なる。本来、金属ピンのある箇所に細いストローのような形態のカーボンが何本か集められていて、円すい形をなしている。それが数本分のピンの代わりをなすというものだ。カーボンなので、軽量化にもつながっているという。
「メーカーが独自に開発したもので、金属ピンが地面に刺さって抜けるのと比べ、この新シューズの方が時間的なロスが少なく、瞬発力も増すそうです。そういうデータがアスリートたちに開示されています」(同・記者)
桐生はすでに、昨年9月の世界陸上(カタール・ドーハ)で、この“ピンなしシューズ”を履いている。まだ全選手には普及していないものの、ランニング界を席巻した厚底シューズではないが、「持っている選手とそうでない選手の差別」「シューズの特性の可否」も問われそうだ。
「ピンなしシューズは、開発にかなりの時間を要したとも聞いています。日本の短距離が世界に通用するようになってから、開発に力が注がれたようです。桐生が100メートル走で10秒を切らなければ、メーカーも開発に力を入れなかったでしょう。つまり、桐生なしに、このシューズは誕生しなかったのです」(陸連関係者)
ピンなしシューズ使用により、桐生が日本記録でもある自己ベストを更新したというニュースはまだ届いていない。しかし、スポーツは、道具の進化の歴史でもある。延期になったが、来年開催予定の東京オリンピックで記録更新は間違いない?