「本当に感染症は他人事ではない。身近に存在していることをあらためて痛感した」
感染予防のために電話取材に応じた芝田山広報部長(元横綱大乃国)は、こう危機感をあらわにした。そして、所属する部屋には他に体調不良を訴える者はいないことを強調した。
とはいえ、相撲部屋は親方をはじめ、力士、行司、床山、呼び出しらが一つ屋根の下で合宿暮らしをしている。まさに密閉、密着、密接の“3密”状態だ。
「この種の症状に最も弱いのが大相撲界です。無観客で、『1人でも感染者が出たら即打ち切り』という約束でスタートした春場所は、何とか千秋楽までこぎ着けたものの、いつ感染者が出てもおかしくない状況でした。部屋がクラスター化して第2、第3の感染者が次々に出る可能性も限りなく高いといえる環境にあるのです」(担当記者)
相撲協会も危険性を察知し、力士たちの密着を阻止するため、他所の部屋への出稽古を禁止するなど、予防策を打ち出していた。
このあおりを最も受けたのが、新大関の朝乃山だ。注目される夏場所に備え、密度の濃い稽古をしたくても、十両復帰が決まったばかりの朝弁慶くらいしか相手がいない。強敵を求めて他所の部屋に出稽古したくても、できないのだ。
「出稽古だけではない。夜も外出禁止なので、大関昇進を祝おうと分厚いご祝儀袋を持って待つタニマチとの会食もできない。まさに踏んだり蹴ったりの状態」(部屋関係者)
その点、悠然と構えているのが横綱・白鵬だ。もともと場所の直前は1、2回と出稽古の回数が少ない上、部屋には炎鵬や石浦ら稽古相手に恵まれている。
その上、延期が決まっていた夏場所(東京・両国国技館)が中止になる可能性も高く、そうなると7月まで体を休められる。35歳になり、“連戦”が難しい白鵬には大歓迎の状況だ。
「白鵬のV45は決まり」関係者の間からは、早くもそんな声が上がっている。