14年ぶりの西武帰還となった松坂だが、仕掛け人は渡辺久信GM(54)。中日を退団してすぐ、つまり自由契約が公示された翌日に連絡を入れ、松坂も二つ返事で帰還を快諾した。
「松坂から退団を申し入れたことになっていますが、事実上の戦力外通告です。昨季の松坂は、一軍登板が2試合。右肩、右肘に爆弾を抱え、たとえ登板できる状態になったとしても、年齢的理由からローテーションを守ることはできませんから」(ベテラン記者)
西武側は「松坂帰還は客寄せではない」と言う。渡辺GMは一貫して、「戦力」と言い続けている。
「ニールが12勝、高橋光成が10勝を挙げましたが、昨季の西武には規定投球回数に到達したピッチャーが1人もいません」(同)
勝因は、チーム打率、総得点で12球団トップを誇る打線にある。リーグワーストの投手陣を“山賊打線”がカバーしたわけだ。
「松坂の一軍帯同は決まりましたが、調整に関してはすべて本人に任せるようですね。開幕にいったん照準を合わせてくれればというのが、辻発彦監督(61)の考えです」(球界関係者)
松坂にも「チャンスあり」と思わせてしまうところが、3連覇の不安材料でもある。
「渡辺GM、辻監督は『若手のお手本に』と言っています。でも、今季はオリンピックでペナントレースが中断する関係で、開幕戦が1週間ほど前倒しになりました。右肩に爆弾を抱える松坂はハイペースになることなく、チーム本隊から離れての調整になりそうです」(同)
別メニューでは、若手の手本にはなれない。しかも、若い投手の多い西武には、松坂が夏の甲子園で無双のピッチングを見せた’98年に生まれていない者も少なくない。西武の若手は「過去の映像を見た」レベルなのだ。恐れ多くて、自分から話し掛けられないだろう。
「渡辺GMは松坂の入団会見で、期待を込めて『1勝でも2勝でも、一軍で戦力になってほしい』と答えるに留めていました」(取材記者)
渡辺GMの本音は、若手投手たちに、「逆境に立たされても諦めない松坂の不屈の精神力」を学びとって欲しいということだろう。ノルマは1勝でも、松坂に課された責任は重大だ。